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【スーゼネ設計者が解説】ゼネコン設計部の仕事内容とは?働き方・年収・向いている人

こんにちは。Nora(ノラ)です。今回は、スーゼネ設計者として、ゼネコン設計部の仕事内容を詳しく紹介します。
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ノラ

建築学科で設計を学んでいると、就職先としてアトリエ系や組織設計事務所を最初に思い浮かべる人が多いかもしれません。一方、ゼネコンにも意匠・構造・設備の設計者が在籍し、超高層ビルから工場、病院、学校、都市再開発まで、さまざまな建築を設計しています。

しかし学生からは、こんな質問をよく聞きます。

  • ゼネコンの設計職と施工管理職は何が違うのか
  • 設計事務所と比べて、デザインの自由度は低いのか
  • 若手のうちから設計を任せてもらえるのか
  • 現場に配属されることはあるのか
  • 給与や働き方はどうなのか

学生の立場からすると、普段はゼネコン設計部の仕事内容なんて、なかなか知る機会が少ないですよね。大学の設計課題では建築の構想や表現に向き合いますが、実務で意匠設計者がどのようにプロジェクトへ関わるかまでは、想像しにくいと思います。

私自身は、スーパーゼネコンの設計部に在籍し、意匠設計者として大規模プロジェクトを中心に携わってきました。この記事では、その経験を踏まえながら、ゼネコン設計部の仕事内容、仕事の進め方、魅力と大変さ、向いている人を紹介します。

会社や担当用途によって実態は異なりますが、進路を考えるための全体像はつかめるはずです。

ゼネコン設計部とは

ゼネコンとは、建築工事や土木工事を総合的に請け負う建設会社です。「General Contractor(ゼネラル・コントラクター)」を略して、一般にゼネコンと呼ばれています。

ゼネコン設計部は、その会社の中で建築物の設計を担う部門です。設計職と施工管理職は採用区分や担当業務が異なり、設計職として採用された人が日常的に施工管理を担当するわけではありません。

ただし、ゼネコン設計部の仕事は施工と切り離せません。設計した建物を同じ会社の施工部門がつくるため、計画段階から「どのようにつくるか」「安全に施工できるか」「品質とコストを両立できるか」まで考える必要があります。

設計図を完成させることだけでなく、建物を実際に完成させることまで見据える。少し大げさに聞こえるかもしれませんが、ここがゼネコン設計部を理解するうえで最も大切な点です。

設計施工一貫方式と設計施工分離方式

建築プロジェクトの発注方式は、大きく「設計施工一貫方式」と「設計施工分離方式」に分けられます。

設計施工一貫方式では、一つのゼネコンが設計と施工をまとめて受注します。施工技術、工程、コストを設計の早い段階から検討できる点が特徴です。

一方、設計施工分離方式では、設計事務所などが設計・監理を担当し、施工会社を別に選定します。この場合、ゼネコンは施工者として参加するのが基本です。

ゼネコン設計部が中心的な役割を果たすのは、主に設計施工一貫方式のプロジェクトです。ただし、実際の役割分担は案件ごとにさまざまです。外部の設計事務所やデザイナーと協働したり、ゼネコンが実施設計を担当したりすることもあります。「ゼネコンが関わる=最初から最後まで一社ですべて設計する」とは限らない、ということです。

ゼネコン設計部の主な仕事内容

「設計」と聞くと、スケッチや模型をつくり、図面を描く仕事を想像するかもしれません。もちろんそれも大切な仕事ですが、実際にはそれだけではありません。このあたりは、学生時代の設計課題と実務の違いが表れやすいところです。

1.顧客の要望と事業条件を整理する

建築は、顧客の目的を実現するためのものです。設計者は打合せを通じて、面積、予算、工期、性能、デザイン、将来計画などを整理します。まだ言葉になっていない課題を対話から読み取り、建築的な提案へ変換していく。このような感じです。

2.企画・基本計画をつくる

敷地条件、法規制、周辺環境、必要諸室、事業収支などを確認し、建物のボリュームや配置、動線を検討します。

案件を受注する前の提案段階では、複数案の比較、プレゼン資料、パース、模型などを短期間でまとめることもあります。設計力だけでなく、「この提案を選ぶ理由」を分かりやすく伝える力も重要です。

3.基本設計をまとめる

基本設計では、平面・断面計画、外装、構造方式、設備、防災、環境性能など、建物の骨格を決めます。規模が大きいほど、社内外の専門家と膨大な条件を整理し、一つの建築へ統合する力が必要です。

4.実施設計図を作成する

実施設計では、施工や見積りに必要な図面・仕様書を作成します。仕上げ、建具、階段、外壁、屋根、防水、設備機器など、検討対象は非常に細かくなります。

近年はBIMで意匠・構造・設備の干渉確認や数量把握も行います。ただし、モデルが納まりを自動的に解決するわけではありません。図面を読み、空間と施工手順を考える力は変わらず重要です。図面作成を協力会社へ依頼する場合も、品質に責任を持つのは担当設計者です。

5.行政協議・確認申請に対応する

建築基準法や消防法、自治体の条例などを確認し、行政や指定確認検査機関と協議します。大規模建築では、防災、バリアフリー、開発許可など、多数の手続きが必要です。法規を満たしながら設計意図を実現することも重要な仕事です。

6.コストと施工性を調整する

どれほど魅力的な案でも、予算を大幅に超えていれば実現できません。設計者は積算部門や施工部門と連携し、コストを確認しながら材料、仕様、工法を調整します。

VE(Value Engineering)は、必要な機能や品質を保ちながら、材料、工法、部材寸法、施工手順を合理化する取り組みです。性能、価格、工期、施工性のバランスを取る視点は、学生の設計課題ではなじみが薄いので、最初は戸惑って当然だと思います。

7.工事中の設計対応を行う

工事が始まった後も設計者の仕事は続きます。施工図や製作図を確認し、現場で判明した条件に対応し、サンプルやモックアップを見ながら仕上がりを調整します。

設計図と現場の間に生じる課題に対し、設計意図を守りながら実現可能な解決策を考えます。施工部門との距離が近く、工事中も密度の高い調整ができる点は大きな特徴です。

プロジェクトはどのように進むのか

案件によって違いはありますが、一般的には次のように進みます。

  1. 営業・企画段階:顧客の要望や事業条件を整理する
  2. 提案・受注段階:設計案、工期、工事費などをまとめて提案する
  3. 基本設計:建物の骨格と主要な仕様を決める
  4. 実施設計:施工・見積りに必要な図面や仕様書を作成する
  5. 見積り・契約調整:工事費を精査し、仕様を調整する
  6. 着工後の設計対応:施工図確認、現場調整、顧客説明などを行う
  7. 竣工・引渡し:検査や是正対応を行い、建物を引き渡す

大規模再開発のように事業規模が大きくなるほど、関わる人の数も増えていきます。発注者、行政、テナント、ホテル運営者、設計事務所、デザイナー、構造・設備の専門家、施工部門など、それぞれが異なる条件や考え方を持っています。

そんな状況では、意匠設計者は単に自分でデザインするだけでは足りません。関係者同士の間を取り持ち、個別に検討されたデザインを一つの建築として統合し、全体を総合監修する。いわば、建築のコーディネーターとしての立ち回りも求められます。

意匠設計者は多くの関係者をつなぐ役割を担います。建築の知識と同じくらい、調整力や説明力が重要になる仕事です。

建物の規模で見る、ゼネコン設計部の関わり方

ゼネコン設計部が扱う建物は、超高層の再開発だけではありません。ここでは規模の異なる事例を並べながら、仕事の違いをイメージしてみましょう。

大規模事例:グラングリーン大阪東京ミッドタウン八重洲

グラングリーン大阪のような都市再開発では、建築、都市計画、公園、ランドスケープ、交通、インフラなどが複雑に関係します。うめきた公園の場合、基本設計、実施設計、施工を複数の設計者・建設会社が分担しています。ゼネコンが常に主設計者になるわけではなく、施工や技術検討を担いながら外部設計者の意図を実現する立場になることもあります。この規模では、建物単体の意匠だけでなく、街全体の回遊性や景観まで視野に入れた調整が必要です。

東京ミッドタウン八重洲は、延床面積約28万4,000㎡の八重洲セントラルタワーを中心に、オフィス、ホテル、店舗、小学校、バスターミナルなどを含む複合施設です。日本設計が都市計画・基本設計・実施設計・監理を担い、竹中工務店が実施設計・施工を担当しています。外部の設計者が描いた計画を、ゼネコン設計部が施工可能な設計図書へ落とし込み、施工部門と連携して完成へつなげる事例として分かりやすいと思います。

このように大規模プロジェクトでは、「誰がデザインしたか」を一社だけで説明できないことも珍しくありません。多数の専門家の考えをまとめ、品質・コスト・工程を成立させることも、ゼネコン設計部の重要な仕事です。

中規模事例:ウッドライズ仙台(延床面積10,188㎡)

ウッドライズ仙台は、竹中工務店が設計・施工した地上10階の賃貸オフィスです。一部に木造を採用し、東北産木材を構造体や家具に活用しています。

1万㎡前後の中規模案件では、大規模再開発ほど組織が巨大にならない一方、意匠、構造、設備、環境性能、コスト、施工性を総合的にまとめる必要があります。意匠設計者が建物全体を見渡しながら、外装や共用部、働く環境のデザインまで一貫して関わりやすい規模ともいえます。

小規模事例:竹中研修所「匠」新館(延床面積1,209㎡)

竹中研修所「匠」新館は、竹中工務店が設計・施工した研修施設です。国産杉のCLTを用い、構造そのものを空間表現につなげています。

小規模案件では、若手であっても建物全体を見渡せる機会が比較的多くなります。その一方で、敷地との関係、細部の納まり、材料の見え方まで、設計者の判断が建物の印象に直接表れます。「小さいから簡単」ということではなく、むしろ密度の高い設計が求められる。このような感じです。

もちろん、担当範囲は会社や案件ごとに異なります。それでも、ゼネコン設計部が超高層建築から数千㎡規模の施設まで幅広く関わっていることは、イメージしてもらえたのではないでしょうか。

若手設計者は何を担当するのか

入社直後から、一人で建物全体を任されるケースはほとんどありません。まずはチームの一員として、先輩の指導を受けながら部分的な業務を担当します。

例えば、次のような仕事です。

  • 計画敷地の法的条件の整理・洗い出し
  • 設計図書・検討図の図面化(CAD・BIM)作業、面積表や仕上表の作成
  • 特定範囲(一部外装、トイレ、階段、特殊諸室など)のデザイン検討
  • 会議資料、プレゼン資料、議事録の作成
  • 構造・設備担当者との調整
  • サンプルの手配やモックアップ作成の段取りを行い、内装材や外装の仕様を決める

大規模プロジェクトでは、最初は建物の一部分しか担当できず、物足りなく感じるかもしれません。「大学では建物全体を設計していたのに、仕事ではトイレだけ?」と思うこともあるでしょう。ただ、一つの部分を深く担当することで、図面の描き方、他職種との調整、品質の確認方法などを学べます。

大切なのは、自分の担当範囲だけを見ないことです。なぜその計画になったのか、構造や設備とどうつながるのか、現場ではどう施工されるのかを意識して追いかけると、成長速度が大きく変わります。

組織設計事務所・アトリエとの違い

ゼネコン設計部の最大の違いは、「施工部門を社内に持つこと」です。

比較項目ゼネコン設計部組織設計事務所アトリエ系事務所
主な役割設計と施工を一体で実現設計・監理を専門に提供建築家の思想を軸に設計
得意な案件大規模・高難度・短工期の案件公共・文化・業務施設など幅広い住宅、店舗、文化施設など
施工との距離非常に近い施工会社とは別組織規模によるが別組織が基本
設計上の特徴技術・コスト・施工性を早期に統合設計者として独立性を保ちやすい作家性や思想を追求しやすい
チーム多職種・大人数になりやすい専門分化されたチーム少人数になりやすい

これは優劣ではなく、仕事の目的と進め方の違いです。

「自分の表現を強く打ち出したい」のか、「設計の専門性を深めたい」のか、「大人数で技術と施工を統合し、巨大な建築を完成させたい」のか。自分がどこに魅力を感じるかで、向いている環境は変わります。

ゼネコン設計部で働く魅力

大規模で複雑な建築に携われる

都市再開発、超高層建築、大空間施設、高度な生産施設などは、多くの専門家と技術がなければ実現できません。学生時代には図面や写真でしか見なかった規模の建築に、当事者として関われることは大きな魅力です。

自分一人の作品ではありませんが、チームでしか到達できない建築があります。街の一部として長く残る建物を、多くの人とつくり上げる達成感はゼネコン設計ならではです。

設計と施工の両方から建築を学べる

現場と近い環境では、自分の描いた線がどのように部材となり、どの順番で組み上がるかを確認できます。施工担当者や専門工事会社から学ぶことも多く、実現性のある設計力が身につきます。

デザインと施工は対立するものではありません。施工方法を理解することで、初めて可能になるデザインもあります。

社内技術を設計に取り込める

大手ゼネコンには技術研究所や専門部署があり、構造、材料、環境、防災、音響、ICT、ロボット施工などの研究開発を行っています。

設計者はそれらの技術をプロジェクトへ取り込み、顧客の課題に対する提案にできます。設計と技術開発、施工ノウハウを組み合わせられることは、大きな強みです。

多様な専門家と仕事ができる

意匠設計だけでなく、構造、設備、ランドスケープ、インテリア、積算、施工、研究開発など、多くの専門家と協働します。自分とは異なる視点に触れながら、建築を総合的に理解できます。

大変な点・入社前に知っておきたい現実

調整業務が非常に多い

設計者の一日は、図面を描くだけでは終わりません。顧客との会議、社内調整、施工部門との打合せ、行政協議、協力会社への指示、資料作成など、多くの時間をコミュニケーションに使います。

「一人で集中してデザインだけを考えたい」というイメージで入社すると、ギャップを感じるかもしれません。

コスト・工期・利益を無視できない

設計事務所にとって、業務の中心的な成果物は「設計図書」です。もちろん着工後には工事監理も行いますが、設計図書をつくり上げ、その対価として設計料を得ることが会社の利益につながります。

対してゼネコンは、設計だけでなく施工まで請け負う事業会社です。そのため設計者にも、図面として成立させるだけでなく、工事費、工程、施工リスク、そして会社としての利益まで考える視点が求められます。少し生々しく聞こえるかもしれませんが、建築を実際につくり切るには欠かせない感覚です。

希望した材料や形状を、そのまま採用できないこともあります。その際に、設計意図の核を見極め、代替案を提案する粘り強さが必要です。

大規模案件ほど自分の担当範囲が限定される

チームが大きくなるほど役割は細分化されます。若手のうちは、外装や共用部など、限られた範囲を長期間担当することもあります。

建物全体を最初から最後まで一人で設計したい人にとっては、成長が遅く感じられる可能性があります。一方で、複雑な建築を高い精度でまとめる経験は、規模の大きな組織でなければ得にくいものです。

繁忙期には業務が集中する

提案提出前、確認申請前、実施設計の締切前、着工直前などは業務が集中しやすくなります。働き方改革や業務効率化は進んでいますが、案件の状況によって忙しさに波があることは理解しておくべきでしょう。

働き方・年収・福利厚生の考え方

学生にとって、給与や働き方はやはり気になるところですよね。ただ、初任給の数字だけでは実際の生活や働きやすさまでは分かりません。基本給、賞与、時間外手当、住宅制度、勤務地、資格支援まで含めて見ることが大切です。

基本給と各種手当

一概には言えませんが、スーパーゼネコンクラスでは近年、初任給が月額30万円を超え、35万円に近づく例も見られるようになりました。背景には、建設業の継続的な人手不足や、ここ数年で進んだ働き方改革があります。

また、社員の年齢構成も今後数年で大きく変わると予想され、各社にとって人事制度の再構築は避けて通れない課題です。給与体系や手当は毎年のように細かく見直されるため、気になる企業がある場合は最新の募集要項を確認し、その会社に勤めるOB・OGにも聞いてみるとよいでしょう。採用ページだけでは分からない部分が、意外と見えてきます。

賞与の支給実績

賞与は各社の業績によって変動します。ここ数年は建設需要の拡大や利益率の改善を背景に上昇傾向が見られましたが、資材価格、人件費、受注環境などの影響も受けるため、先行きは不透明です。

単年度の支給額だけで判断せず、数年分の実績や会社全体の業績も合わせて見るのが現実的です。

平均勤続年数と年齢構成

平均勤続年数や平均年齢は会社によって異なります。建設業に限った話ではありませんが、ベテラン層と若手層が厚く、その中間にあたる世代が相対的に少ない職場もあります。

加えて、経験と知識が豊富なバブル世代・団塊ジュニア世代が、ここ数年から今後にかけて定年期を迎えます。年齢構成が大きく変わるなかで、若手が担う仕事のウェイトは確実に大きくなっている、というのが現場で働く筆者の肌感覚です。若いうちから任される機会が増える一方、先輩から知識を吸収する姿勢もこれまで以上に大切になります。

設計部門の時間外労働

これも会社や部署、プロジェクトによりますが、以前の「スーパーブラック」と呼ばれるような状態からはかなり改善してきました。提案前や設計図書の提出前など、繁忙期が忙しいこと自体は変わりません。ただし、繁忙期でない時期まで長時間労働を強いられる空気は薄れています。

設計業務では、設計料と投入時間のバランスを見ながら部門収支を管理します。そのため最近は、長く働くことよりも、限られた時間で効率よく成果物を出すことが強く求められています。忙しさがなくなったというより、仕事の密度と進め方が変わってきた、という表現が近いでしょう。

住宅制度、寮、社宅、家賃補助

一般に、企業規模が大きくなるほど福利厚生は充実する傾向があります。独身寮、社宅、家賃補助、持家支援などが用意されている会社も少なくありません。

ただし、同じ程度の会社負担でも、「寮に入る制度」「一定額を補助する制度」「年齢や勤務地で条件が変わる制度」など仕組みはさまざまです。額面だけでなく、対象年齢、利用期間、勤務地の条件まで比べてみてください。

一級建築士などの資格取得支援

現在、スーパーゼネコン5社はいずれも、大手資格予備校との連携などを通じて一級建築士試験の取得を支援しています。会社によっては、入社後の一定期間を資格取得の勉強に充てられるところもあります。

筆者の周囲から聞く範囲では、組織設計事務所では会社による支援の差が比較的大きく、必ずしもここまで制度が整っているとは限りません。資格取得支援については、ゼネコン設計部の強みの一つといえます。学生のうちは実感しにくいかもしれませんが、仕事と勉強を両立する時期には、この差がかなり効いてきます。

転勤・海外勤務の可能性

全国や海外に拠点を持つ企業では、転勤や海外勤務の可能性があります。ただし、本人の希望を聞いてもらえる場合は多く、家庭や健康など、やむを得ない事情には配慮されるケースもあります。

「望まない転勤」が社会的な課題として語られるようになり、単身赴任時の別居手当や帰省旅費を充実させる動きも見られます。とはいえ運用は会社ごとに異なるため、転勤の頻度だけでなく、対象となった場合の支援まで確認しておくと安心です。

フレックス勤務と在宅勤務

近年は出社回帰の流れもあり、設計部門でも出社を基本とする会社が増えています。一方で、フレックスタイムや在宅勤務を柔軟に使える雰囲気は定着してきました。

設計は対面での打合せや実物サンプルの確認も多いため、すべてを在宅で完結させるのは難しい仕事です。それでも、集中して図面をまとめる日や、通院・育児などの事情がある日に働き方を調整しやすくなったのは、大きな変化です。

育児・介護との両立支援

男性の育児休業取得者は、以前に比べてかなり増えました。育児だけでなく、介護のためにフレックスタイムや在宅勤務を活用する人もいます。

ただし、制度があることと、実際に利用しやすいことは別です。OB・OG訪問では、「取得者がいるか」「復帰後にどのような働き方をしているか」まで聞けると、職場の実態をつかみやすくなります。このような感じで、待遇は一つの数字ではなく、制度と運用の両方を見ることがポイントです。

ゼネコン設計部に向いている人

大規模建築をチームでつくりたい人

ゼネコン設計は個人競技ではありません。多くの専門家と協働しながら、大きく複雑な建築を完成させたい人に向いています。

デザインと技術の両方に興味がある人

見た目の美しさだけでなく、構造、設備、環境性能、施工方法にも関心を持てる人は、仕事を楽しみやすいでしょう。

コミュニケーションと調整を苦にしない人

意見が異なる関係者の間に入り、条件を整理し、合意点を探す場面が多くあります。自分の案を説明するだけでなく、相手の事情を理解して解決策を考える力が重要です。

建物の完成まで責任を持ちたい人

図面を描いて終わりではなく、現場での調整を経て、実際の建物として完成するまで見届けたい人に向いています。

安定した環境で長期的に成長したい人

研修や資格支援を活用し、幅広い案件を経験しながら専門性を高めたい人にとって、魅力的な環境になり得ます。

向いていない可能性がある人

次の特徴があるからといって、必ず向いていないわけではありません。ただし、入社後のギャップを避けるために、自分の価値観を確認しておきましょう。

  • 自分一人の作品として建築をつくりたい
  • 小規模案件を最初から最後まで一人で担当したい
  • コストや施工条件より、表現を最優先したい
  • 会議や調整より、個人での制作作業に集中したい
  • 転勤や大規模組織での分業を避けたい

こうした志向が強い場合は、アトリエ系事務所や小規模設計事務所のほうが合う可能性があります。重要なのは、会社の知名度ではなく、自分が望む設計者像と仕事の進め方が一致しているかです。

学生のうちに準備しておきたいこと

設計課題のプロセスを言葉にする

就職活動では、作品そのものに加えて「なぜこの案にしたのか」を問われます。敷地や利用者の課題をどう読み、どんな選択肢を比較し、最終案に至ったのかを説明できるようにしましょう。うまく話そうと構えすぎなくても大丈夫です。自分が迷った点まで含めて筋道を立てて話せるほうが、設計にどう向き合ったかが伝わります。

建築を実際に見に行く

写真や図面だけでなく、建物を訪れ、動線、スケール、材料、光、音、周辺との関係を体験してください。可能なら工事現場の見学会にも参加すると、設計と施工のつながりを理解できます。

構造・設備・法規を避けない

意匠設計を志望する学生ほど、デザイン以外の科目を後回しにしがちです。しかし実務では、構造や設備、法規を無視して空間をつくることはできません。

すべてを専門家の水準まで理解する必要はありませんが、各分野の基本用語を理解し、専門家と会話できる基礎を身につけておくと役立ちます。

BIMやプレゼンテーションツールに触れる

CAD、BIM、画像編集、レイアウト、表計算などのツールは、入社後も使用します。ただし、ソフトを操作できること自体が目的ではありません。情報を整理し、設計意図を正確に伝えるための道具として使いましょう。

インターンシップとOB・OG訪問を活用する

企業のウェブサイトだけでは、実際の仕事の進め方や職場の雰囲気までは分かりません。インターンシップ、説明会、OB・OG訪問を通じて、複数の社員から話を聞くことをおすすめします。

質問するときは、「忙しいですか」のような答えにくい聞き方よりも、「直近1週間で、図面作成・会議・現場対応にそれぞれどの程度時間を使いましたか」と具体的に聞くほうが実態を理解できます。

ゼネコン設計部を目指す学生におすすめの3冊

記事の内容をもう少し深掘りしたい人に向けて、仕事や実務への理解につながる3冊を紹介します。

1.『建築学生のハローワーク 改訂増補版』五十嵐太郎 編

建築学科卒業後の進路を幅広く知りたい人向けです。設計事務所やゼネコンだけに視野を限定せず、「建築を学んだ先にどんな仕事があるのか」を考える入口になります。

リンク前の一言例: ゼネコン設計部とほかの進路を比べたい人は、まずこの一冊から読んでみると全体像をつかみやすいです。

2.『世界で一番楽しい 建物できるまで図鑑 RC造・鉄骨造』

RC造と鉄骨造の建物が、どのような順序で施工され、完成していくのかをイラストで学べる一冊です。ゼネコン設計部を目指すなら、図面の先で建物がどうつくられるのかを知っておくことは大きな強みになります。

リンク前の一言例: 設計と施工のつながりを視覚的に理解したい人には、特におすすめしやすい一冊です。

建築家16組のプロジェクトと矩計論を通して、材料の取り合い、環境、法規、施工性、プロポーションなどを学べる一冊です。大学の設計課題では平面図や断面図に意識が向きがちですが、実務では材料同士がどう取り合い、どのように施工できるかまで考える必要があります。

3.『建築断面 矩計図集』(グラフィック社)

リンク前の一言例: 「デザインした形を、実際に建てられる図面へ落とし込む感覚」を身につけたい人におすすめです。

アトリエ・組織設計・ゼネコン設計の違いを比較したい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
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アトリエ・組織設計・ゼネコン設計の違いとは?仕事内容・働き方・向いている人を徹底比較

まとめ:ゼネコン設計部は、建築を「実現する力」を磨ける場所

ゼネコン設計部は、建物のデザインだけを行う部署ではありません。

顧客の要望を整理し、意匠・構造・設備を統合し、コストや工期を調整し、施工部門と協働しながら建物を完成させる仕事です。そこでは、デザイン力に加えて、技術力、調整力、説明力、判断力が求められます。

大規模建築に携われること、施工の知識を身につけられること、社内の技術を活用できることは大きな魅力です。一方、分業が細かいこと、調整業務が多いこと、コストや工期との両立が必要なことは、入社前に理解しておくべき点です。

就職先を考えるときに、「ゼネコンと設計事務所のどちらが上か」という答えはありません。

自分はどのような規模の建築に関わりたいのか。個人の表現とチームでの実現のどちらに魅力を感じるのか。図面を描くところまでなのか、施工を経て完成するところまで見届けたいのか。

自分がなりたい設計者像を具体的にすると、進むべき方向が見えやすくなります。

学生の立場からすると、普段はゼネコン設計部の仕事内容を具体的に知る機会はなかなかありませんよね。この記事が、仕事の華やかな部分だけでなく、調整や積み重ねも含めて進路を考えるきっかけになればうれしいです。

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